上勝町視察研修記
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平成10年10月25日 | |
県議会議員 西原しげき | |
バスは険しい山間の道をくねくねと走る。 榛原郡で言えばちょうど川根の奥を走っている感じだ。 峠を越えると急に開けた山間の集落が広がる。バスはその集落の入り口で止まる。 「ここから歩いてください!」 の案内に思わず一同びっくり。後で駐車場がないので、道路が狭くなったところでバスが止まっただけであったということが理解できたが、さすがに最初はびっくりした。 一向は歩いて数分のところにある、農協の上勝支所に到着。 |
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役場産業課の横石さん |
なつかしい横石さんが待っていてくれた。 7月に相良町に講師として「彩り」の指導と講演に来てくれた役場の課長補佐さんだ。 と言うよりは私などは「阿波踊りの先生」として印象が深い。講演の後地頭方小学校で阿波踊りの振り付け指導をやってくれた。おかげで今年の地頭方地区は「阿波踊り」がどこでも踊られた。 人口2500人の上勝町では全町の体育大会の開催中。 |
熱気あふれる会場の横にある農協上勝支所では、すでに出荷された「彩り」商品が梱包されて並んでいる。 柿の葉、「先日までは1枚50円だったんですが、今は25円から30円です」 一ケースで2500円から3000円と言ったところ。 イチョウの葉、栗の葉、ホウの葉、ホウの葉は一枚が80円。お茶所のわが地域では嫌われ者の葛の葉が、一ケースで2000円から2500円には一同びっくり。 |
イチョウの葉 |
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「こりゃ宝の山だわ!」 困っているものがお金になるなんてと不思議に思いながらも、その秘密を探る。 横石さんが 「なんと言っても一番の需要はもみじ、2番が南天で、梅、桃、桜と続きます。」 と教えてくれた。 はすの茎が「はす芋」としてとして出荷されている。変わったものだと聞いてみると 「実はハスの葉は彩りとして出荷しています。茎はもともとこちらでは、塩でもんで食べていましたが、捨てていた葉のほうがいまでは高いんですよ」 もう少しすると集荷が始まり忙しくなるとのことで支所を後にする。 |
バスでさらに奥に移動する。 途中、たぬきの販売所がある。(農産品販売所) 「葉っぱがお金に化けると言う意味です!でも売っているものは化けませんので、ご安心を!」と横石さん。 ついたところは鰍烽ュさんの上勝モデル住宅展示場。 地元木材をふんだんに使ったパネル住宅だが、坪あたり60万は高い。 「第3セクターです。もみじが1年で1億数千万稼ぐのに、森林組合の1年の売上は8300万円。山では稼げなくなりました。でも何とかがんばろうと町が出資して会社を作りました。」 |
モデル住宅 木の香りがする |
壁紙は彩りを使った素敵なアート |
住宅は素敵ですが、「売れましたか?」の質問に 「まだ一棟も売れていません。でも目的は別のほうにあります」 実は間伐剤などを利用した土木資材に力を入れているとのこと。静岡県でも木材ブロックや杭垣根など積極的に使うよう私たちも運動をしていることを告げると、そのとおりと意見が合う。 バリアフリーで、木のにおいが素敵で、玄関の壁紙に押し花がふんだんに使われているこの住宅が売れることを願いつつ私たちは、二手に分かれて現地視察へ。 |
バスでは入れない地域なのでジャンボタクシーと自家用車ではいる。 「この家は年間400万円稼ぐばあちゃんが最近立てた家です!」 狭い道に、似つかわしくないモダンな家が。さっきのモデル住宅と違う。 山に囲まれた町が、木で稼げなくなって、しかし葉っぱで稼いで外材で家を建てる。 物語とすればいたって理解しやすいが(木を切ってしまえば葉っぱがなくなる)なんとも妙な気がする。 |
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車一台がようやくとおれる曲がりくねった道をあがっていく。 周りにきれいな桜並木が続く。 「これ全部、桜の葉を取るんです。道ぐろでないと採りにくいのでぎりぎりに植えてあります。見てください、見渡す限り南天、柿、もみじ、杉、ヒノキ。」 段段畑ならぬ、段段林(幼木)が山の斜面に広がる。光があたると黄色くなるものなどは寒冷遮で覆ってある。 「年間町では10000本の植樹をしています。なるべく大きな木を植えています。もちろん早くたくさん収穫ができるようにとのことですが、補助金を出しています。景観と産業の一挙両得ですよ!」 うらやましい限りです。 |
1面宝の山 |
私たちの地域なら一番に荒らしてしまう急な段段畑が、モノレールをつけて、さまざまな木々を植えて「宝の山に」。8桁産業になっている。 「今、上勝のばあちゃんたちは、ここに生まれて或いは嫁いで来て最高の喜び感じているんじゃないですか!」 女性にとって家にいてできる仕事でしかも稼げる仕事があるということはすばらしい。 |
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おいしいたけ |
つづいて鰹繽气oイオを視察する。 ここも第3セクターでしいたけを栽培している。 ユニークなのは、全国からしいたけ作りの家族を公募してはじめたこと。工場資材は貸してくれる。月収が約50万と言うから悪くはない。「足までおいしいたけ」がんばってください。アイデアがいっぱいだ。 |
最後に会場を月ケ谷温泉村の集会施設に移して下坂美喜江部会長さんの実技指導とビデオ。 下坂部会長さんが13年間この彩りを引っ張ってきた。 ビデオの中で町長さんが 「農村では胃袋だけでなく、心も豊かにして上げられるところを目指します」 と言っていたのには同感。今後の寒村の大事な一面だ。 さらに町長は 「町民参加の町民自らの町作りが必要」と言う。 この町には「子供たちの未来を考える」夢やチャレンジに希望をかける人たちがいる。やはりキーワードは「やる気」だと感じる。 小さな町のでっかい町おこしは半ば成功したと言える。 |
下坂部会長による実演 |
彩りの作品「鶴」 |
「下坂会長さんは何にお金使うんですか」 の質問に 「私たちの彩りがどんな風に使われるのか、バス借り切って食べに行くんです。200人の会員の半数は毎日葉っぱをとりに行きます。37パーセントの高齢化の町で寝たきりは少ないですよ!生き生きしている。これも彩りをはじめたおかげです。だから横石さんは、私たちに取って大黒さんです。そして私たちは町にとって福の神!」 参りました。 |
皆さんからは秘訣は何か鋭い質問も出る。 「売込みにはもちろんプロの板さんの指導と連携がありました。しかし何と言っても下坂さんのリーダーシップですね」とはアドバイサーの鈴木さん。 清流の音を聞きながら温泉につかり、旅の疲れを癒してからの料理はまさに「彩り」のオンパレードでした。 今回の視察によって、新しい「やる気」が相良町に出てくることを期待しながら心地よい酔い中、眠りにつきました。 |