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平成15年度静岡県議会新エネルギーと
福祉海外事情調査(速報)

11月13日
 
まだ暗いパリの街をオルリー空港を目指す。
今日の視察先は南フランス、アビニョンにあるメロックスMOX燃料製造工場。
オルリー空港から50人乗りの小型ジェットで目的地アビニョンへ向かう。
眼下には延々と穀物地帯が続き、はるかかなたの雲の果てに目をやれば雪をいただいたアルプスの険しい峰々が連なる。
穀倉地帯が切れて、黄色の銀杏や紅葉した森の木々の間に、赤い屋根白壁の家並みが見えてくるとアビニョン空港におりたった。
小さな地方空港だ。

寒い!
パリよりずっと暖かいはずの南フランスアビニョンなのにと不思議に思って聞くと、ミストラルといってこちら特有の「からっかぜ」らしい。夏も吹くが、冬は寒さを伴うと言う。


「アビニョンって、あの歌で有名なところ?」
勉強不足でというより、MOX燃料の調査が重要で付随した観光的要素の調べがしてなかった。
アビニョンは結構観光地としても価値がある。
途中アビニョンの市街地を抜ける。
城壁が街をすっぽり覆っている。

ここは有名なアビニョン教皇が100年ほど居を構えたところ。世界史を紐解けば価値が見えてくる。
残念ながらそこまでの知識がなかったが、ここは世界遺産に指定されていると言う。ローヌ川の中州にバスを止めて、対岸にアビニョン教皇庁とアビニョンの橋を望む。

明らかに原子力施設とわかる厳重な鉄条網の境界が延々と続く。
施設正面にくると、フランス国旗と日の丸がはためいている。歓迎してくれている。
ここからは、カメラはだめ。
簡単なドリンクサービスをしている間に、名前を呼ばれて入場カードをもらう。パスポートと交換だ。
隣の会議室で説明が始まる。
「メルシーボクー!」奥之山団長の挨拶に
「団長のフランス語はうまいですね」と日本担当のルーケットさん。
県議会の視察は珍しいと言う。そういえば入り口に茨城県議会のメダルと相馬の人形が置いてあった。東海村の燃料製造施設を思い出す。

OHPを使った施設内の説明に続いて日本語版でのビデオも参考になった。
フランスの原子力発電は、政府出資のアレバ(AREVA)社の参加に原子力設備製造のフラマトム社と核燃料会社コジェマ(COGEMA)社などがある。
フランスは1973年オイルショックで、国内資源の開発、省エネルギー、エネルギーの多様化をエネルギー施策にあげた。

1975年には炉型をすべて加圧水型に統一した。
原子力発電所は57基(フェニックスを除く56基はすべて加圧水型)
設備容量が6,292kwアメリカについで世界2位。
2001年度は5,267億キロワット時の発電をした。原発のシェアは76.2%となっている。
そのうちMOX燃料は20基で使用されている。

この施設では以前から再処理施設があった。初期の黒鉛炉もあったがいずれも廃止されている。敷地内には、原子力庁や廃棄物処理施設、医療用核物質製造工場などもある。
一番上流部の端には、もんじゅと同じ形のフェニックス高速増殖炉もあるがトラブルで使われていないと言う。
そのような施設の中心的な存在として敷地約25,000・のMOX燃料工場がある。

1985年にコジェマ社とフラントン社それに電力会社EDFの間で合意がされて、1990年に建設が開始された。
1993年には機械がすえつけられて生産は1995年から始まった。
2001年には沸騰水型の燃料も作り始め、2002年にはドイツ向けにも生産がはじまった。2003年の9月には生産が年間145トンまで許可となった。
自動化が進んでいて、市場のさまざまな要望にもこたえることができ、日本を含めて燃料生産ができる。後の施設見学でも東京電力向けの製造施設が見えた。
すでに日本のNFI、GNF,MHIなどのプロセス検査や機械検査にも適合している。

ルーケットさんは地元雇用の貢献に付いても時間を割いて説明した。
580人の社員が3交代をとっているが、給食や清掃など周辺を含めた雇用の創出は地元で2500人としている。
立地県であるガール県での購買は70%を締めている。従業員の1/4が5・以内に住んでいる。

製造に付いては2工程作業で、すでに30年の実績があるという。
最初の混合は、二酸化ウランと二酸化プルトニウムに再生不良品を混合する。さらにそのできたものに二酸化ウランを混ぜて原料が出来上がる。
それをペレットの型に押し出して1700度で焼結させる。
できたペレット燃料を燃料棒に装てんして燃料集合体にして完成である。
通常の燃料ではプルトニウムは入っていないが、ここではプルトニウムが4〜9%入る。高速増殖とでは16〜20%となる。

着替えをして施設内に入る。
白のつなぎと防毒マスクといういでたちは何か物々しい。
もちろん下着からくつまで全部着替える。
先日横須賀の核燃料製造施設を見学したばかりなので比較してよくわかる。

何よりびっくりするのは「近くで見れること」だ。
第一バリアがグローブボックス。この中ですべて機械による自動的で作業が行われる。
何か不都合が起これば、外から手袋で作業する。ちょうど新生児の保育器のように外から機械を修理できるようになっている。たまたまある工程でその作業が行われていて見ることができた。
そんな修理とか点検が日常的に行われている様子だった。
どこからでも手が届くために、グローブボックスは縦横高さが1メートル程度といったような制約がある。

すべての工程を丁寧に案内してもらった。
特に感じたことは「非常にシンプルでわかりやすい」ということだ。
むしろ日本の作業工程と安全管理のほうがずっと進んでいる。ただ違うことは、「プルトニウムを混ぜる」と言うことだけだ。
安全とコストを考えれば国内製造がベストだ。
政府の原発に対する姿勢ひとつだろう。

帰りはアビニョンの新幹線新駅からフランスの誇るTGV新幹線で帰る。
きつい日差しにモダンな建物が映える。
ホームもプラットホームから遮蔽壁まで木で作られている。
フランス新幹線は静かで乗り心地が良い。
アビニョンからパリまで約2時間ノンストップで快適な汽車旅が満喫できた。
どこかの国の、各駅停車の新幹線とは比べ物にならない。