マニフェスト 西原しげき紹介 8つの約束 一言コラム かわら版 レポート メールマガジン

 

平成15年度静岡県議会新エネルギーと
福祉海外事情調査(速報)

11月18日
 
視察最終日。
マドリッドは海抜700メートルほどあって少し寒い。
ゆっくり目の朝をとってスペイン政府経済省エネルギー政策局を訪問する。
カルメン局長が不在のためマリアへネス国際広報担当がそれぞれのスタッフをそろえて対応してくれる。

電力担当のマイテベラスコさんはかわいい女性だ。
彼女から電力事情の基本的な事項について説明が始まる。
エネルギー政策は1997年のヨーロッパ指令に基づいて始まった。
それは目標のみを示していて、やり方については各国に任されている。


3つの条件。
最低の投資であること。
安定供給ができること。
環境保全に務める事。

2つの方法。
競争原理の導入。
行動の分離。つまり、電力の配給、送電、管理については自由化ではなくて規則が設けられなければならない。自由化の対象は、電力の創出(発電事業)、商品化(どのようなかたちで消費者に配電するか)。
競争原理になることによって、発電設備をどこに作っても良い。発電設備のエネルギー源はどれでも良い、競争力のあるマーケットの創設、消費者を選ぶことができる、第3者のアクセスが可能になる、供給会社の設立の自由が自由化によって始まった。

再生可能エネルギーは援助制度がある。
エネルギーでの政府介入は最小限になった。配送の計画だけが政府の仕事。
驚いてしまう。
こんなことで再生可能エネルギーの普及が進むのであろうか。

電力は今まで公共サービスであったが、今では「必要不可欠の基本サービス」と考え方が変化したと言う。つまり民営化した。
今年の1月1日から自由化された。
4000万人の人口のうち2200万口の消費者が自由化された。(口とは住宅と事業をなど総数)電気は、発電会社、外国売電気、中売り業者などが売り手となって、毎日毎時間の電気を市場で売る。市場会社は、OMELといってそこで消費者やトレーダーなど第三者が購入する。もちろんこの市場を通さなくても良い。
この市場は1年365日動いている。
5年前と比べて、電力供給量は増えているが値段は32%下がっている。
そして質も向上している。(停電などの事故がない)
電力の自由化が進んできたからだと評価されている。

最終消費者は電気の購入を次の方法から選択できる。
市場に参加して直接買う。
発電事業者と直接契約する。
供給会社と契約する。
決められた金額(1年に一度政府が最大金額を設定して)で計約する。

自由市場なのでもちろん上がり下がりがあるが、ピーク時対策は日本と同じように大口需要家とディスカウントなどで調整する努力をしている。
スペインは特にエネルギー源を海外に頼っているので輸入の問題などがある。
石油火力はおおよそ20%から30%。原発は30%。
水力と火力は相関関係にある。降雨が少ないと火力が増える。
今後天然ガスが伸びていくが、価格が乱高下あって不安要素ある。
すべてのエネルギー源の75%を海外に頼っている。

30%原発に頼っていると言うのは、EU域内では平均的。
スペイン国内には7サイト9基の原発がある。
1968年に16万キロワットの最初の原発が稼動。
1988年に最後の原発が稼動開始。

以降建設していない。発電は30%だが、設備率は14%。原発が効率よく働いている証拠だ。設備容量は、787万5千キロワットとなる。
1968年に建設された炉は2006年の4月から休止予定である。
1972年に建設されたバンテローシュ発電所は、1989年に火災事故が発生して閉鎖された。タービンのところでの火災だったが、閉鎖されて現在解体作業中。
第2レベルまで解体されて炉心部分はあと30年待ってその後解体する予定。
しかしスペインでの原発依存度は大きい。
「国内生産できる1/4の半分は原発である。」
担当のホセマヌエルさんは強調する。

今後は原発の計画はなく、消費が増えていくことになると必然的に依存度は低下してくる。
今後、電力は自由化されたので、国単位でどのような発電をすると言うようなことはなく、発電する会社が(市場原理で)決定していく。その限りにおいても原発はない。

10年先のエネルギー政策として(1)天然ガス発電を進めて行く。
事業者に任せていく。というがそのあたりの詳細について知りたい。
さらに2010年までの計画として(2)再生エネルギーの提案と、・省エネルギーと効率的エネルギーの活用が上げられる。

原発を止めた理由について質問をする。
原発は1968年から稼動し始めたが、1083年の政府のエネルギー政策でストップをかけた。そして1992年に建設中の2期の工事をストップした。
あまりにもこのまま建設すれば供給が大きくなってしまうという理由。
モラトリアムにかかった。

京都議定書に関して言えば二酸化炭素削減には原発のほうが優れているのではないか。との質問に。
「原発アレルギーはヨーロッパにある。EUは原子力に反応する。スペインも放射性廃棄物に反応する。」具体的に、二酸化炭素に友好かどうかの回答は聞けなかったが、基本的には認めていない。
原発の立地については、推進していないが、一般的には、過疎地自治体で雇用の創出や税金の増加などメリットもあることを強調した。

最後は、エンリレさんからエネルギー政策全般について説明を受ける。
再生可能エネルギープランは1999年に策定された。
2000年から2010年までの計画だ。
目的は、(1)環境保護(2)国内産エネルギーを増やして外国産を減らす事だ。
1次エネルギーを6%から12%にする。これに貢献するのが(1)風力と(2)バイオマスだ。
3年経つが、206年までの達成率に対して現在80%の達成率。しかし、分野によって度合いが違う。太陽熱利用はまだ12%しか進んでいない。

政府の対策では
(1) 設備設置に優遇税制
(2)設置の義務付け
等をやっている。

政府の実施事項について

電力やガスの供給網整備がある。ネットワークの確立。
再生エネルギーの供給を大幅に増やして2011年には全体供給の1/3をしめる計画?
風力発電はヨーロッパでは2番目の設置。
以前はドイツはデンマーク製であったが、現在ではスペイン独自でやっている。
太陽光は、進んでいない。
昨日見学したエシハはスペインでは先進地だという。「孤立した場所では・・・」という認識では熱を入れていない現状がわかる。

再生可能エネルギーに水力をカウントするかどうかは意味が大きい。
質問に「1万キロワット以下は小水力」と答えたが、曖昧さが残った。
再生エネルギーを進めることと、電力の自由化は相反する課題である。
そこのところの議論をもう少し深めたかったが「再生エネルギーの電気には政府が奨励金を出している。また政府からの設備の補助金も出る・・・。」と言う説明に多少救われる気がした。

少ない時間の中でスペインの電力事情全般から話しが入ったので再生可能エネルギーについての調査が深まらなかった。
しかし、この再生エネルギーについては、単にスペインの問題ではなくて、EU域内での全体のエネルギー政策と大きく連動して来る。
特に、脱原発を掲げるドイツは、再生エネルギーに補助金を出すし、個人も高いことを納得して電気を購入している。
しかし、このことが電力自由化を阻害する大きな要因になるはずだ。それは、EU域内の農業や工業製品の物流とも、すなわち経済政策とも連動してくる。
環境を表に出すのか、経済が最優先化。
フランスの原子力政策と強い軍隊と豊かな農業を見ていると、わが国の進むべき道が険しいことがあらためて理解できた思いだ。

マドリッドのクラウンプラザホテルの窓から見えるスペイン広場の喧騒は、夜の11時を回っているのに続いている。
フランス・スペイン8泊の旅は間もなく終わる。
ここで得たさまざまな出来事と視察がそれぞれの今後の活動に役立つことを願って。