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 憲法問題を考える〜最近の講演から〜

8月20日名古屋市内で自民党青年議員連盟大会が開催された。
西田会長が、「自民党と民主党の違いが、若さだけでは意味がない。結党の精神に立ち返って憲法改正を視野に入れよう!」と熱く語った。
それをうけて、二人の基調講演が行われた。

平沼赳夫前経済産業大臣の講演
平沼さんは「個人的な話から」と前置きして入った。
11年間のサラリーマン生活(日東紡績)を経て衆議院議員になった。
政治家を志していたので憲法問題に詳しい学者などの研究会に所属していた。
復憲研究会となじみが薄い名前だ。
理由はこうだ。
日本は戦争に負けたが、国際法上、戦いに勝った国と言えども基本法を権力で押し付けてはいけない。しかし占領国の強圧で日本国憲法は出来た。
明治憲法の改正でやるべきだ。と言う意味で「復憲」を訴えていた。
もうそんな時代ではないが、最近の議論を聞いていると不安がある。


5年前から憲法調査会を衆議院と参議院で立ち上げた。
流れが変わってきた。
すごくいいことだと思うが、実は問題がある。
それは、「押し付けられた憲法」という話は過去のことだから、プライバシーとか、環境とか今の時代に合った憲法に変えていこう!という意味で「改憲」と言う発想で進んでいる。
つまり与野党とも「憲法成立過程」を問題としなくなってきた。

日本は聖徳太子の時代から法治国家。
十七条の憲法をはじめ、律令制度、式目やご法度などすべて法律に基づいてやってきた。
「けじめと筋道」を大事にしてきた。
だから成立過程を問題にしなければおかしい。


ポツダム宣言は無条件降伏と思われている。
しかし「有条件」である。
無条件は、陸海空軍の無条件解体だけである。
しかし、軍隊が無条件解体された段階で「無条件降伏」状態の命令が占領政策の下でマッカーサーから振ってきた。
憲法はその際たるものである。完全に押し付けられた。
昭和20年8月30日マッカーサーはコーンパイプをくわえて日本に降り立った。
10月には憲法改正指令が出されて、松本烝治国務大臣を責任者として甲乙両案が秘密裏に作成された。しかし、12月に毎日にスクープされるに及んでマッカーサーは腹心のホイットニーに憲法草案の作成を命じた。
正式なターニングポイントは翌21年の2月になる。

マッカーサーが命じた指令パーパー(イエローペーパー)には次の3つの命令があった。
1. 天皇の地位はこれを守る。つまり天皇を利用する。(HEAD OB STATS)
2. 第9条の記載事項そのもの。つまり軍隊・交戦権を持たせない。
3. 日本の封建制を打破する。
草案は、1週間で作られた。もちろん英文だ。
そして、時の吉田外務大臣と松本の元を訪れたホイットニーは迫った。
納得しない二人に「では天皇はない!」つまり天皇を東京裁判へ引き出して裁く!と迫った。

憲法の前文はリンカーンがゲティスバーグで独立宣言をした言葉どおりだ。
「共産党と社会党は喜んでいるが、憲法があったから日本の平和が守られたのではない!」
平沼さんは強調した。
「平和は日米安保があったからだ。アメリカの贖罪でもある。
2発の原爆と東京や名古屋など全国各地の無差別空襲に対する贖罪でもある。
アメリカが守ってくれたから戦争がおきないで、平和や経済的成長を享受できた。アメリカがコミットしなければ日本はソ連や中国によって赤化されていた!」

憲法の3章、10条から40条は国民の権利や義務が書かれている。
驚くことに「権利」の羅列が続く。
義務は「納税」だけ。付随として「親は子どもに教育を授ける義務」と「労働の権利と義務」があるくらいだ。

教育基本法の改正が叫ばれているが、憲法と表裏一体となっている。
今の基本法には家庭のことがかかれていない。
日本の伝統文化歴史にふれていない。
「個人」「個人」と個人の尊厳に力をいれすぎたので、半世紀で先生の言うこときかない。学級崩壊が起こっている。


実は憲法には矛盾がたくさんある。
天皇は国事行為のみとなっている。ほかはやっちゃあいけないのか。
国務大臣の任命も天皇と総理大臣の二人にあるように解釈できる。
9条については、学者の間では19通りの解釈が出来ると言われている。

憲法調査会で、ある学者が憲法を作ったGHQの生き残りの方に取材した話をした。
全員に共通した意見は「えっ!まだあの憲法をそのまま使っているのですか?」だった。
彼らは、占領政策が終わって独立したら変えるはずだと思っていたそうだ。

「法治国はけじめとすじみち!」
「憲法の成立過程をみんなが理解して、原点に返って、われわれが育んできた伝統文化歴史・家庭の大切さを入れて、21世紀にふさわしいものも入れて、自らの憲法を作るときが来た。私の意見はアナログだと言われている。成立過程は議論しなくていいという人が多くなってきたが、やはり成立過程に帰って、自民党結党の精神に戻ってやるべきだ」
熱く語って定刻ぴたりと1時間の熱弁を閉じた。
会場からは割れんばかりの拍手が続いた。

続いて演題に立ったのは日本政策研究センター所長伊藤哲夫さん。

風貌は学者といった感じだが、熱い語りをする。
時代は護憲改憲の対立ではなくなった!と切り出した。
憲法をどう改正するか!根本的対立が始まっている。


二通りの考え方がある。
民主党などの発想で、リベラル化していく、日本国憲法を進化させるというものがある。そして、自民党などの、国とか歴史伝統を謳った保守の方向を向いた憲法にしていく。
対立軸はここにある。
民主党が発表している「創憲案」では、現行憲法の進化である。
内容は、昔の社会党の言っていることと同じだ。
憲法草案を作っている事務局職員は社会主義協会派であることかもしれない。

現行憲法は平和憲法ではない。
「武装解除憲法」である。もしくは日本の「非軍事化憲法」である。
マッカーサーの命令で出来た憲法であることは紛れもない事実である。

基本的人権に問題がある。
憲法調査会の議論も人権集会みたいになっている。
基本的人権は国家以前と言うが本当か。
国家以前と言うが、国家がなければ人権も守れないのは、イランやアフガンやベスニアヘルツェゴビナを見ればわかる。
崇高な基本的人権という権利があっても、国家があって平和が守られなければ、人権は存在しない。国家以前の基本的人権はない・・・屁理屈だ!
話のテンポはいい。

フランス革命で基本的人権が謳われたと言うが、いくら人権宣言しても国家が自由民主主義でなければだめだ。フランス革命では、一つの村が虐殺で消えた。多くの人が殺された。60万人が死んだ。
ソ連や中国・北朝鮮も国家が問題で、基本的人権がなかった。
アメリカの憲法の前文はすごい!
まず国内の治安防衛がなければ・・それが謳われている。
国防の権利があることが謳われている。義務ではなくて権利とされていることがすごい。
だから銃の保持があるのが問題だとも思うが。

しかし日本の憲法には「国防の義務」となる根拠がない。
「公共の福祉」は非常に狭義で利害の調整ぐらいにしか解釈されていない。
ドイツ憲法でも「国家の道徳秩序のため」に個人の権利が制限される。
国家なくして個人は成立しない。
人間は個人として生まれたんじゃない!個人では生きていくことは出来ない。

自民党の憲法の中間試案はなかなか出来が良い。
しかし、多少不満もある。
それは「伝統を受け継ぐ」という気持ちが希薄である。
国家の大前提は、目に見えない人の魂が積みあがっている。先人の柱で支えられている。試案では、魂が積み重なっていることが想像されない。

大東亜戦争を終わらせるためにアメリカは無条件降伏を掲げて日本本土での戦いをする予定であった。しかし、中国の蒋介石は「そんなことをすればまだ150万人のアメリカンボーイが死ぬよ!」と忠告された。
それは、沖縄戦、硫黄島、アリューシャン列島の戦いを見れば予想された。
そこで1.原爆でたたく。2.ポツダム宣言という有条件降伏に切り替える。とした。
有条件とは、ストレートな表現ではないが、天皇制は残す(国体は日本国民の意思で決める)。そして、日本の民主主義的傾向の復活と強化をすると言うことだった。


少なくてもこの段階では、大正デモクラシーがあった日本の健全な民主主義を認知し、それを復活させると考えていた。
しかし、軍隊が解体されると「無条件降伏」的な占領政策がマッカーサーによって次々と押し付けられてきた。

有条件の降伏が出てきたのは、死をとして戦って散っていった将兵のおかげである。
死の柱によって、沖縄戦、硫黄島、アリューシャン列島の激烈な戦いによって、恐れをなした連合国側の判断で、無条件にならなかった。
特攻隊は何を思って死んで行ったか。
特攻隊の西田将校は、勝てるのか?の問いに「勝てない・・・しかし」
と、これからの終戦の交渉で日本の条件をよくするために特攻をやると答えた。
「勝つためではなくて、戦後の復興のために・・・」と言って死んでいった先人の思いを書くべきだ。
伊藤さんの熱弁はボルテージが上がる。

「PERSON OF THE EMPEROR」
GHQから示された憲法を押し付けられて、飲まざるを得なかった、悔しさを思うべきだ。
そして明治憲法の精神を学ぶべきだ。
天皇による統治は「知らす」だという。
知ろうとする心、天皇は国民の意見や悩み喜び苦しみを知ろうとする。
天皇は国民を統治しない。
「しらす」、どこの立憲君主国にもない日本の天皇制だ。
明治憲法に流れている立憲の精神を知って、・・・・。

お二人の話は私に新たなる力を与えてくれた。
明治憲法から学ぶこと、憲法成立過程を検証すること、原点を知るべきだ。
憲法改正はその延長にある。
そして、なによりも東京裁判の歴史観から脱却することが必要だ。
そんな思いを新たにした。

後書きに代えて

毎日アテネから日本の金メダル獲得の報が伝わってくる。
国がなければオリンピックに出ることもできない。
個人が国によって守られている。
日本っていいなあ!とつくづくと感じる。
誇りや元気を与えてくれた選手の皆さんありがとうございます。