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 豊島産廃は今!〜直島のエコタウンを見る〜

高松港サンポートを出航したカーフェリー「なおしま」は、静かに穏やかな瀬戸内海を進んでいく。連なる島々が重なり合って見える。
案内をしてくれた筒井さんは「中国の方がくると、ここは川に見えるようです。」と説明してくれた。確かに、揚子江などの川幅を考えればそんな感じになる。
船内は、非常にゆったりとしている。外の蒸し暑さに比べて快適な船室で、しばし転寝。
12時40分に出た船は約1時間で直島の宮浦港に着く。
エコタウン
船着場から振り返ると瀬戸大橋が遠方に見える。
すぐそこは宇野で岡山県だ。
小さな待合所で環境センター直通のバスを待つ。
フェリーで一緒についた観光客が小さなバスにひしめいて乗っていく。
この島には美術館がある。
ベネッセコーポレーション・直島文化村の一連の施設がインターナショナルな雰囲気をかもし出している。
どうもこちらのほうが有名らしい。
今日の目的は、隣の豊島で大問題になった産業廃棄物不法投棄問題の解決を目指して建設運営されている「香川県直島環境センター」と「三菱マテリアルのリサイクルプラント」である。
町営の小さなマイクロバスが14時11分の定刻に港を出発する。
気さくな運転手さんは元三菱マテリアル(旧三菱精錬)の社員とか。
バス一台がようやく通る街中をあっという間に抜けるとはげ山が出てくる。
「今年の冬に火事がありました」
山肌に焼けた木が立っている。痛々しい。

峠を越えると貯水池が見えその先に大きな工場が見えてくる。


フェリー
町営バス

いきなり工場の正門である。
「写真撮影はここから出来ません」
環境センターはこの工場の中にある。
そしてそこまで町営バスが行く。
銅鉱石を溶練し電練して純度の高い銅の製品を作っている。
さらに貴金属の金や銀も合わせて精錬される。
派生して産まれる亜硫酸ガスから硫酸や石膏ボードが作られる。
100年近く続く三菱の銅貴金属精錬所だ。
環境センター
そこに香川県が環境センターを建設した。
話は10年以上前にさかのぼる。
隣の豊島に産業廃棄物が埋め立てられてきた。


1980年から90年代にかけてだ。
大量に野積みされ野焼きもされていた。
不法ではあるが、香川県の行政も指導にかけた。
1990年に兵庫県警が不法投棄で介入し、ようやく香川県も撤去命令を出したが、会社は倒産した。
1993年に豊島の住民が公害調停を申請し、その後香川県が直島へ中間処理施設を作って安全に処理する案を呈示し、2000年3月に直島がこれを受け入れることを決定し、最終的に2000年6月調停が成立した。
実に6年がかかった。
そのときに香川県の鍋島知事は「県が間違った指示を出した」ことを住民に謝罪して、2016年までに豊島をもとの美しい姿に戻すことを約束した。

それは不法投棄された60万トンの土と廃棄物を直島へ運んで中間処理すること、そしてその間に地下水が汚染されて外部に漏れ出さないよう遮断して水処理することなどが決まった。
まず最初に訪れたのは環境センター。
建設運営は県がやっている。
直島の人口は約3600人。このごみ処理もかねる。
豊島の産廃は大型トラックごと特殊運搬船「太陽」で運ばれてくる。

船
瀬戸内の養殖現場を波立たせないように船底が平らになった船だ。
8キロを約40分で18台のトラックが一日2往復する。運ばれてくる量は日量300トンになる。ここから先は、最近全国的に採用されている溶融炉である。
コンクリートの骨材
前処理で均質化され回転式溶融路へ運ばれる。
100トン処理が2基あるので一日の処理量は200トン。町の一般廃棄物は3〜4トンなのでほとんどが豊島の産廃である。
1300度の炉ではダイオキシンの心配はない。さらに排ガスにはバグフィルターと触媒フィルターがついている。
溶融で出来たスラグは選別されてコンクリートの骨材として使用される。香川県では公共工事に優先使用される。
豊島の産廃不法投棄は国レベルでさまざまな法改正を前進させた。
経済優先の負の遺産が産業廃棄物の不法投棄だとすると、その解決を通じて循環型・環境優先の社会にしていくよう努力しようと言うことだ。
そこで香川県と直島町は「エコアイランドなおしまプラン」を作成した。
直島町がソフトを受け持つ。
環境調和型の街づくりは、環境教育のフィールド作りやエコツアーの誘致、エコネットワークや緑化事業と幅広い。
エコアイランドなおしまプラン
案内してくれた女性は町民だと言う。エコツアーのスタッフだ。
そしてハードは県と三菱マテリアル直島精錬所が受け持つ。
県は「環境センター」で豊島廃棄物の中間処理を、三菱は循環資源回収事業として「溶融飛灰資源化施設」と「有価金属リサイクル施設」を手がける。
銅精錬で磨いた技術と実績が新しい循環型社会でも見事に生かされた。
この一連のプランが平成13年エコタウンに指定された。

隣にある三菱の資源化とリサイクルの施設には、町営バスで移動する。
こちらでも町民の案内人が説明してくれる。
「まだ一ヶ月ですから」と言うとおり説明は文章の棒読みでたどたどしい。早くなれてほしい。
質問に答えるが、やはり専門的な回答には無理だ。
無理に答えると疑問や不信につながる。特に三菱マテリアルの企業としての説明だとすると、この形がいいのか疑問だ。
「溶融飛灰資源化施設」は約70トンの島外の飛灰を受け入れる。もちろん隣の環境センターのものも合わせて水を加えて、カルシウムやカリウム、ナトリウムを浸出し脱水ケーキにされる。これが脱塩さいと言われ銅精錬でスラグになる。
「有価金属リサイクル施設」は、自動車シュレッダーダストや家電シュレッダー、基盤類などが運び込まれる。
キルン型溶融炉でスラグにされてやはり銅精錬施設に送られる。
こちらには、さまざまな貴重な貴金属も含まれているので、それが銅や金となって製品化される。

二つの施設の見学が終わったのが16時15分。20分のバスに乗って宮浦港へ30分に到着。
フェリーの出向が17時なので少し時間があった。
二人で一軒しかない小さなたこ焼きやさんへ入る。
冷えたビールを一杯頼み、横の席に座っていた地元の方に話を伺う。
三菱マテリアルの工場の周りがなぜ木がないのか。
「火事で焼けたんでしょう?」と聞くと
「あそこではずっと鉛の精錬もやっていた。今みたいに公害設備もなかったし無理もないがね」撮影禁止になっている工場の周辺が、全部禿山になって黄土色の地肌が見えているのが異様に感じたがこれで納得した。
説明の女性がISO14001取得の話をしていたが、「木がない」工場はやはり何か不自然だ。
直島が、岡山県に近接していて、水も電気も学校も岡山県に頼っているのに「なぜ香川県?」直島町議員の中山さんが、昔の殿様の話までさかのぼって説明してくれた。
小さなたこ焼きやさんにで、フェリーの時間待ちのフランス人も含めて「直島」の話題で花が咲いた。
美術館を見に来たフランス人男性と日本女性のご夫婦は環境問題に興味がある。
「地中美術館の2000円は高いです。そんな(環境センター)施設あるんだったら見たかった!」残念そうだ。

遠ざかっていく直島へ「今度は美術館を見にくるよ!」そう語りかけた。
27の群島と白砂清祥の直島町。
豊島問題がなければ来ようと思わなかっただろう。
ご案内いただいた帰省中の建通新聞の筒井さんと中電ビジネスの山本さん、偶然知り合った直島町議会の中山さんに感謝して「豊島産廃は今!直島レポート」とします。

直島地図