マニフェスト 西原しげき紹介 8つの約束 一言コラム かわら版 レポート メールマガジン

 

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静岡県・浙江省友好提携20周年記念
第4回静岡県チャーター便中国訪問団Vol.5

平成14年10月28日

県議会議員 西原しげき
昨日の上海の夜は少し飲みすぎた。少し空がまぶしい。
晴天が続く中国でありがたいが、相変らず上海はスモッグでかすんでいる。
今日は、上海市環境保護局の視察。
時間的な余裕もあり最初に静岡県の事務所に立ち寄る事にする。所長の外山さんにとっては留守中の訪問で気になるところだが、スタッフが迎えてくれる。
以前の事務所にもよったことがあるが、ずっと広くて快適だ。
「他の事務所は止めても、ここ上海事務所は県にとって必要だ!」
威勢のいい意見がバスの社内で出る。各会派代表者がいっしょだから意見も重たい。勢いのある中国の毒気に当たっているせいか「行け行け」の雰囲気だ。
事務所の金さんに「美味しい日本茶をほしい!」と無理なお願いをして静岡茶を出してもらいいざ環境保護局へ。
出迎えた張副局長は、パソコンのスライドで説明を丁寧にしてくれる。
廃棄物の現状について

@固体廃棄物は1605万トン年間に発生する。
2001年は2000年に比べて18.5%増加していると言うからその経済成長はすごい。
「この10年は経済が二桁成長で発展はすさましいが、廃棄物や汚染は90年代のレベルに納めている。」それは市民の環境に対する要望が高くなったことも影響していると言う。

A生活系のごみは年間526万トン。
30%は分別している。アメリカなどを訪問したという張副局長は、これからの大きな仕事は「分別」と考えている。水や空気の浄化は進んでいるが分別はこれからだという。
工業系のごみは一番多いのが鉄鋼(製鉄所)くずや発電の石炭焼却ごみなどだが、これは再利用が進んでいる。建設などに使われており、96.5%はリサイクルされている。
97年から増えていないが、(2000年に増えたが発電所のため)それは上海の産業構造が重工業から金融やサービス、ハイテクに変わってきたからだと指摘する。
生活系の焼却は1000トンの焼却炉が一つと2000トンの焼却炉を建設していて、1000トンが来年完成する。「ダイオキシン対策もついています。」張副局長は胸を張る。
「私達の仕事で重要な事は市民への宣伝です!」というように、分別にしても焼却や埋め立てにしても問題がありそうだ。「3R、リサイクル、リユース、リデュースです」と口にしたとおり張さんの感覚は日本やヨーロッパ仕様だが。
「いまは、埋める事と、焼却することです。そのために、小型生活ごみ圧縮装置を125箇所に設置しました。しかし、これからは分別して総合リサイクルです」
頼もしい限りだが、本当にできるのかが課題だ。話は続く。

B危険廃棄物は工業系生活系ともに併せて46万トン発生する。
責任は企業だと言う。
「生活系は、環境衛生局で私たち環境保護局は危険廃棄物のことについて管轄しています」といって詳細に説明をする。
固体廃棄物は国の汚染防止法があり、その元で上海市の環境保全条例や危険廃棄物汚染防止方などがある。そして国は「ごみをどのように処理してほしいか企業に示す」(考えれば日本と同じだが。)
廃棄物を出す企業は、量や内容について詳細に記載した申告を国にしなければならない。
それに対して許可証が発行される。企業はそれに基づいてチェックされる。監督するための警察があって、年度監査や突然の抜き打ち検査もある厳しそうだ。運搬を同じ出申告が必要だ。

処理の方法について
「埋める、焼く、化学処理です」先ほどに戻るが、今後はリサイクル分別に主力を置いていくといっている。

これからの方向について(what we will do!)
力を入れようとしていることは
@ 医療廃棄物で、2003年には一つの大きな処理施設で処理します。
A 廃棄物を出す企業に合理的にごみを減らす努力をしてもらう。上海の産業構造とも関連してくる、重工業から、金融、貿易、ハイテクへ。
B 汚染処理技術の向上を。場所を集中して大規模にやる。

「歴史上この5年とこれからの5年は上海が大きく成長する。環境にとってもチャンスとして廃棄物処理の企画をしっかりやっていく!」状況の変化にも新しい政策や技術で対応していく!と力強さに自信が見て取れる。

わが視察団から意見や質問がたくさん出る。
「清掃車を見なかったが?」に「生活系のごみの処理は夜」やっていると言う。どうりで昼清掃作業車を見かけない。
生活系は無料だが、現在徴収をしようか議論していると言う。
「いくつかの案がありますが皆さんはどう思いますか。」と張さんが話す。

いわゆるごみの有料化だが、徴収の仕方で悩んでいると言う。
@ 戸籍で一世帯いくら
A 水道料金(水を多く使えば高い)
B 消費税で使った人から
C 環境税を
@ とAは上海政府のレベルでできると言うことと、「水」にかけて徴収するのがとりやすい。新しいシステムがいらないしコストがかからないということでAになりそうだと言うことだ。

「ばい煙や悪臭それに川の汚れはどうですか?」だんだん突っ込みがきびしくなる。
今までの先進国では公害は段階的にやってきた。しかし中国では「いっぺんにやってきた」と中国の特殊事情を説明する。

確かに日本では、川の汚れとばい煙は同じ時期だが、二酸化炭素やダイオキシンとはそれぞれ時期がずれている。それが中国では、河川の汚れとばい煙と二酸化炭素とダイオキシンがいっぺんにやってきた。
「いっぺんに対応しなければならないので、GDPの3%の150億元を年間使っています」よく金額の意味が理解できないが、「全力でいっぺんに対応している」と言うことだ。

そしゅう川黒くて汚かったが、基準を作ったら匂いがなくなって魚も戻ってきた。今川べりのマンションは人気がある。空気も有害成分を規制して記録しているが、5年で20%減ったという。でもこのスモッグはまだまだだなと思うと「ほこりは先進国に劣ります!」と理解している。
しかし、これについても「2004年にはクリーンな天然ガスにしていくし、3〜5年後には車の排出規制を厳しくしてヨーロッパのスタンダードに合わせ国際基準と同じにします」環境保護局として3年ごとに行動計画を作ってやっていくという。
この国は「やれるだろう!」と思うが、昨年11月訪問した浙江省の環境局の幹部が「経済が成り立たなければできない」と指摘したことを思い出した。これから数年が正念場だ。

数字を計算していたメンバーから、市民の数と焼却炉や埋め立て処分場の現状が会わないことについて質問が出る。
1600万人の上海市で1000トンの焼却炉が一つや二つでやっていけるはずがない。
埋め立て処分場についても上等の施設はないと見た。
産業廃棄物で「鉄くずや発電の石炭灰」は「建設現場で道路などに使っている」と答えていたが、それが「最終処分場」と見てもよさそうだ。日本では、そのまま使えない。
現状では、「有効利用」の名目でそのまま埋め立てに使っているが、いずれ問題が出るので大至急最新の埋めたて処分場を(無害埋め立て)建設している様子だ。
特に上海では、海抜数メートルなので地下水位が高い。
「水の汚染に敏感です。工業廃棄物はコンクリートの壁(50〜60センチ)を作ってHTPEシートを敷いて水の拡散を防ぎます。生活系も最近では、粘土層の上にシートを敷いています。浸出水のチェックも監視センサーをつけて厳しく見張っています。

「一日12,000tでる生活廃棄物を2〜3年後には、3〜4000トンをリサイクル、3000トンを焼却、4〜5000トンを埋め立てにする。」
数年後に上海の廃棄物処理の現状がどうなっているか大いに楽しみだが、絶対に日本ではこう言い切れる「廃棄物行政」は存在しないことを思うと、うらやましくなった。
何でもかんでも「民意を大切!」では「経済がどうなっても良いのか」に反論できにくくて、あるいは「私の所に処分場作るのは反対!」「ここの環境が壊れるのは反対」におののいて進展しない。
張副局長に聞いてみたいと思ったことがある。
処理費の徴収でドイツのデュアルシステムや日本の容器包装リサイクルのようなことを考えないか。(国家としてになってしまうが)
今は人件費も安くて、勝手に捨てられても集まってリサイクルされる缶やペットボトルなどもいずれシステムがうまくいかなくなる。そんなこともあって「デポジット」が考えられないか。
張さんが「廃棄物処理もこれからは市場化でやっていく」といった意味がひとつ理解できなかった。生産者責任ということかどうか。

中国の「環境行政」は経済と同じに、いやもっとすごいスピードで進むのかもしれない。
そんなことを感じた環境保護局の視察だった。

上海一の高層ビル(建設費500億円)

上海タワーを眼下に眺める

随行のお二人ごくろうさまでした。(豫園にて)
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