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ヨーロッパ視察研修
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盛だくさんのヨーロッパ研修日記 11/6〜11/8
 西原しげき
去る11月6日から21日にかけての15日間(成田前泊含む)私たち県議会欧州視察団は有意義な研修をしてきました。
今後正式に研修報告書はまとめられますが、私の私的研修録として旅先でまとめましたものです。何かの参考にしていただけましたら幸いです。

11月6日
ガラス越しの夜景に中に新東京国際空港のエプロンが映る。
先ほどまで続いた県議会欧州視察団の結団式(懇親会)は有意義なうちに幕を閉じた。
「県議会にいる以上に活発な意見交換だな!」
と誰かがつぶやいたが、介護保険制度、企業献金などから始まって首都機能移転度まで久しぶりの「後を考えない会合」の成果十分な意見が言えた。
部屋に帰って明日からの準備をあれやこれやと考えながら、眠りにつく。
11月7日
私たち県議会欧州視察団一行は、長いたびを終えて、パリのシャルルドゴール空港についた。さすがにヨーロッパの玄関口というだけあって、乗り換えのゲートが別の建物になっている。
ビジネスクラスのラウンジにくつろぐとさすがにみんな疲れ気味である。
寒いと聞いていたので、厚手のコートを着ないで着込んで降りたに、歩くのは空調のきいた構内という事もあって、歩いて移動しているとじっと汗ばんでくる。
現地時間で(日本時間で)すでに1時半を回っている。私としてはおねんねの時間だが、皮肉にもこちらはまだ、7日の午後5時半。まだ今からフライトで、ドイツのフランクフルトに7時半過ぎに到着というから、先が思いやられる。

11月8日
昨日の夜は時差のせいかよく眠れなかった。
ホテルを8時半に出発する。風はないが、少し外にいると深々とした寒さは体に効いてくる。私たちは、最初に風力発電所の調査のため、オーデンバルトに向かう。
ドイツ風情がいっぱいの秋深まり行く町並みや、色づいた針葉樹の森の中を進んでいく。途中に広がる緑の放牧場もとてもきれいだ。
丘陵地の高台に、めざす目的の風力発電所はあった。
微風だが、勢いよく3機の風力発電機が回っている。しかしどこにも事務所はない。
しばらく待つが誰もこない。
「こないうちに帰ってしまおうか!」
などという声もあるが、心配してトラベル会社に電話をしようとしたところで、ロルフ・ベカーさんがオペルの小型車でさっ爽とあらわれる。

ベッカーさんと風車
この風力発電所は5年前の10月にオープンしました。有限責任会社で、オーデンバルト・ビンドといいます。ベッカーさんはその代表の一人です。
ベッカーさんたち38人(現在36人)は、5年前に風力発電所を作ろうと集まって、州からの補助金や銀行からの借り入れなどで3機の発電所を建設しました。機械はTACKE社製の600キロワットのものです。
北の州では風力発電所をやっているから、ここでもやろうではないか。そんな動機でしたが、以下の3点に検討を加えました。
@風が十分に吹いているか。  A発電した電気を持っていく架線がるか。B建設工事の車が入れるか。また機種については「雷」に対処できうるものを選定しました。
建設には、5年前で370万マルクかかりました。
そのうちヘッセン週では30パーセントの補助金を、また100万マルクについてはエコ銀行が融資してくれました。38人は自己資金を出していません。会社で借り入れをしました。「10年で償却を考えていますが、順調で、今は無給の私たちですが、2年後からは給料がもらえる予定です。」と語るベカーさんの言葉は自信にあふれていました。
「しかしこれも、1989年に成立した電気の買取システムのおかげです」とベッカーさん。現在は16.9ペニヒ/kwhとのこと。最初のころはデンマークが進んでいたが、現在ではドイツが追い抜いたとのことであります。
当時は1機120万マルクほどでしたが、今では1500kwhで220万マルクできるそうである。市場には近々3000kwhの機種も出てくるそうである。
メンテナンスについて、羽が12年から15年で一番短いということで、柱については100年もつ計算だということでした。
この風力発電機は、3メートルの風から運転をはじめ、12メートルで最高の600kwhを出します。25メートル以上では、危険防止のため機械的に停止します。
このシステムで、400世帯の方1600人が一年間使う電気を起こしている。
風がないのが16%であとの84%は発電が可能です。
また設置されている土地は地域から借りている。1年で一家が使う電気は約4000kwhで金額にして1000マルク。
少し風が出て寒くなってきたが、私たちは、小高い草原の上にたつ風力発電の施設内を見学させてもらう。「メンテナンスもほとんどいらないですし、いいですよ」
「特に個人の力で達成したことを誇りに思っています」
最後に彼が残した言葉が印象的でした。
私たちと同じように視察する地元の初老のグループがありました。テーブルの上に地元のお酒と腸詰ウインナーを広げて楽しく談笑している輪に入れてもらい、しばし国際交流をしました。


OHPをつかって熱心に説明

ヘッセン州環境省関連施設
ここは州と銀行が1991年に設立した電力開発会社。
新しいエネルギーの技術開発を行うことによって成り立っている。社員は25人の小さな会社だが内容は面白い。
風力発電に州が補助金を出す審査や、自社が直接風力発電をする事業もやっている。
担当の技術者は
「電力は競争で打ち勝つものではない。今、この風力発電で利益をあげようとしているのではない。環境のためなのである」
と説明したことにすべてが語り尽くされている。
彼はOHPを使いながら、京都会議以降の地球温暖化防止に向けた取り組みと風力発電について説明を続ける。
ドイツは2010年と決められた目標を、2005年に前倒しをしている。そのためには@エネルギーを無駄にしない。新しい技術の元、無駄にならないものを作る努力をしてきた。
GNPは1973年から95年で58%増加したが、エネルギーの伸びは8.6%と、新しい技術によってエネルギーの消費を減らしてきた。A循環エネルギー水力や風力太陽などを使うことを積極的に進めてきた。
ドイツでは、現在79万キロワットの風力発電が設置され、建設費として5530万マルクが投資された。(270機)
補助金額の一機あたりは急激に低下してきたが、毎年設置される施設は多くなってきた。
年々技術の進歩で、形規模ともに大型化してきたし値段も安くなってきた。
1997年には、州として一箇所あたり10万マルクを補助していた。
しかし設置が増加してきたのは、補助があったのではではない。
電力を売ることができる、あるいは買うことの義務が生じたからである。
環境における影響を減らすために風力発電をはじめたわけだが問題もある。
@ 景観。自然の景観ではない。観光に影響も心配。
A 鳥の保護、特につるなど心配。
B 音の問題。しかし道路の音に比べれば問題ない。
C 音の問題に関しては、人家から500メートル以上離して設置するということにした。秒速8メートルの風のとき500メートルはなれていれば30ホーン以下となるからほとんど問題ない。1キロ以上はなせといわれれば、ドイツにはそんな条件のいいところはなくなってしまう。
確実に風力発電は、二酸化炭素の排出や硫黄酸化物あるいは窒素酸化物の排出を減らしてきた。
原子力発電のディスカッションになったとき、この風力発電が、原子力発電をやめた場合の重要なものとなると考える人と、ほんの一部の小さな力としかならないと思っている人とがいる。
私たちはヘッセンビンドという、一般の人も出資できる風力発電所の会社を作った。合資会社で一人最小出資が5000マルク。ヘッセンビンドは3ヶ所の風力発電施設を作った。
876万マルクで300人の人が参加した。出資については、出資金が税額控除される仕組みがそれを支えた。
今後の予想利益を見ると、すでに予定以上の成績(利益)を出しているので、充分先が見通せる状況。
そこで2つ目の会社を作った。
これは、500kwh×6機、600kwh×5機で1300万マルクの投資となる。600人の協力者から500万マルクの出資を得た。
この仕組みは「地域や自治体とともに作る」システムで大変よいシステムだと思う。
その地域や自治体が管理している土地に設置される。「やろうか!」と思うときに、みんなで話し合われてできていく。
ある町(人口3700人)でこの会社が、発電所を造るように提案した。最初、町は理解していなかったが、すぐに理解して乗ってきた。
「資金は銀行から借りてきて、できた電気は電力会社に売る」収益は折半で、12年の契約として、12年経過するとその施設は自治体のものとなる。
聞いていて、これはさしずめPFI(private finance initiative)と理解する。
ここまできて彼は
「実は今難しい問題があるのです」
と電力事情が変わってきたことについて説明をはじめた。
まず、1年前に市場開放されたので電力料金が下がってきた。15%から20%家庭電力で下がってきた。家庭電力で、1kwあたり23、5ペニヒ程度。工場などで14,3ペニヒ。環境にやさしい電気は高いのだが、現在のように電力会社が、16ペニヒで買ってくれるなら十分採算が取れる。しかし、これが安くなってくるようだとやっていけない。誰も5年後のことはわからない。
強敵は大きな電力会社だ。彼らは安く作ることができる。彼らには30%から40%の生産余力がある。今ベルリンの議会で検討がなされている。法的規制をかけて電力の買取価格を維持していくかどうか。
たとえば、最低買取価格を16ペニヒと決めてしまう。また、10年間と期限を決めて、決められた量を買うこととする(ただし金額については競争)この方法のほうが、量の中で自由な価格競争ができるので有効である。
これらの措置によって、現在続いている風力発電を設置する動きが、止まらないようにしていく。ともかく15ペニヒ以下にならないようにしなければとてもやっていけない。
ヨーロッパ全体では、10パーセントを循環型のエネルギーでまかなっていこうとしている。
わが視察団から質問が出る。
「あなたは緑の党の方ですか」
おいおいいきなりのっけからけんか売るような質問を、と心配するが。彼は、今のドイツ人の環境と経済に対する考え方について答えてくれる。
「環境を考えた場合、自由経済だけではない。環境を考えた上での、自由経済でなければならない。」とした上で、
「確かにこのシステムは、独占であり、市場経済にあっていない」と認めつつも、ドイツでは、高い電力を指定してでも買う人がたくさんでてきていることを指摘する。
「ドイツの半数の人が、自然にやさしいエネルギーをほしがっています。もちろん安ければどんなエネルギーでも良いと思っている人も5パーセントいますが」と説明する。
ドイツでは原子力発電を廃止するという決定を出したことについて話を向けると、
「政府でも今もめています。現在稼動しているものについて、企業と話し合いで契約をして止めていこうとする穏健な案と、緑の党が主張する、法律で決めるべきだという案があります。実質的に止めることも可能だと思いますが、それは経済と政治の問題です」
また燃料電池などの新エネルギーの開発については50年は無理ではないかと答えていたが、確かにここは風力発電で食べている会社だから、風力がさらに伸びていく主張に沿って考えればそうかもしれません。
私たちはドイツ人の理論好きを午前と午後充分に味わった。発電会社を出ると、それぞれ先ほどまでの熱心な議論につられて、私たちの電力の考え方について意見を出し合う。
このあたりについて団長から
「生き方の問題につながるな!」とつぶやきがでたが、まさにそれが原点になってくる。
経済だけで考えていれば見えるものが見えてこない。しかしこの当たりのことについても、私たちはしっかりと議会として、あるいは政党としても話をしておくべきだ。少なくともドイツ人のように、理論的な部分まで含めて。