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ヨーロッパ視察研修
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盛だくさんのヨーロッパ研修日記 11/9
 西原しげき
11月9日
私たちは、マインツを後に一路南下し,ミュンヘンを目指す。
車窓を抜ける景色は、小雨に煙る牧草地と、道の両側に延々と続く黄色く色づいた並木。アウトバーンを降りてロマンチック街道に入る。その道沿いに、中世の風情をそのままに残した小さな町が点在する。その一つ、中世の城壁に囲まれた、ローデンブルグに立ち寄る。本当に中世の町をそのままにしたようなかわいい町並み。狭い道には、人形屋さんが並んでいる。クリスマスシーズンを控えて、飾りつけがきれいですばらしい。しかし観光客の多くが日本人観光客で、お互いにイメージを落としているのがなんともおかしい。
ロマンチック街道沿いにさらに行って昼食をネルトリンゲンでとる。
向かいに、ある少し寂しげな駅舎ものぞいてみる。
どこに行っても、ビール、スープ(クルトン入り)、ジャガイモつきの肉類そしてデザートというメニューが定番化してきた。さしずめ日本なら、定職も食べるが、今日はそば、明日は天丼、あさっては牛丼と皿の並びも変わる。しかしこちらはまったく同じ。スープが何とかおいしいのが慰めだが、よくドイツ人はこんな単調な食事が平気なんだろう。
食後もさらに走りつづけて午後3時に、私たちは、今日の視察先であるアウグスブルグの最新ごみ処理施設に到着する。

ごみ処理場全景
案内してくれたのはAVA社のアシターさん。
公的出資が51パーセント、プライベート出資が49パーセントの有限責任会社で、主な仕事は@市民のごみ処理 A容器包装リサイクル法の対象製品(グリュームプンクト表示製品)の分別作業 B家庭から出る生ごみのコンポスト の3つである。
ごみ処理の範囲は、アウグスブルクとその近郊まで含めて対象人口は約百万人という。
焼却に回るものは年間22、5万トン。それを、10トン/時間の処理能力を持った焼却炉が3機あって24時間稼動している。もちろん各種の公害対策は万全で、特にダイオキシンは規制の0、1ナノグラムを大きくクリアーする0,001ナノグラムというから自信の程が伺える。
しかしこのプラント自身はたいして変哲もない代物で日本ではどこにでもある。日本ではダイオキシン製造機と悪者になっている電気集塵機も設置されているし、焼却炉の温度も920度と、今日本で導入が盛んに叫ばれているガス化溶融炉でもない。
答えは次にある。
つまり家庭から出る生ごみを焼いていない。生ごみは焼却炉の温度を下げる。そのことによって一定温度で燃すことが困難となり、ダイオキシンの発生を誘発する危険性があるのだが、ここではその生ごみを燃していない。
家庭から出る生ごみと、30%ほどの伐採木を合わせて年間45,000トンほどがコンポストされる。10週間ほどで土になる。年間の生産量は約25,000トンで,そのままの状態で出荷されるものと,土や成分を混ぜて付加価値の高い製品と2種類がある。
そしてプラスチックごみは、再生されるごみとして機械選別、さらに人選別と分別されリサイクルなどに回される。人選別は将来は機械化されるという。この量が年間36,000トン。
ここのシステムはおおむね以下のようになっている

手選別作業工程
家庭で出るごみのうち、容器包装リサイクルの対象になるものは分別してそちらに入れる。すでに料金は上乗せされているので、一般のごみと区別して7種類に分別して出される。
それ以外のごみのうち生ごみは、やはりそれだけを別にしてだされる。そして残った容器でもなく、生ごみでもないごみが(たぶんコピー紙や残飯など)一まとめとして出される。
ごみ処理費用に付いて聞けなかったが、説明の中で、「そのごみをほかに入れると自分で払う」といっていたので、多分容器包装リサイクルの分はただで、分別と、その他のごみについて有料という解釈で良いと思う。最も容器包装リサイクルがただといっても、これは企業責任であり、消費者としてもコストの中に含まれているという解釈で行けば負担していることになる。
電化製品について聞いてみると、冷蔵庫は専門業者が処理(リサイクルも含めて)しているが、他のものは持ってくれば処理しているという。ただし自治体ごとに違っているのでこれが一般的でもないらしい。
車については、現在も政府で議論が続いていてどうなるかわからない。
デポジットやプラスチックのリサイクルについても質問したが、制度上のことなので、処理専門担当としては答えがかみ合わず、突っ込んだ質問は断念する。この辺は森さん(県デュッセルドルフ駐在)に確認することにする。
この処理施設は1990年に建設をはじめて1994年に稼動した。それ以前は、トンあたりの処理費用が200マルクだったが、この施設ができてからは420マルクになってしまった。ごみ処理費用は、この会社がそれぞれの自治体から請け負っている。処理費用は、それぞれの自治体・地域の人がしっかり分別や出す量を減らす努力をすれば安くなる。
収集運搬はここではやらない。自治体の仕事である。その費用の自治体と家庭で負担している。
できたコンポスト肥料については、土の専門メーカーに出荷もしているし、市民にも分けている。(たぶん有料)尚、できた肥料(土壌改良剤)についてはバイエルン州で検査をしている。
この会社の運営には市長や議員などが理事として加わっている。代表者はマーケティング担当と運営担当二人で構成されている。
ビデオの調子が悪く、ビジュアルな説明が行われなかったのが残念だった。
「工場の視察は?」との問いかけに「日本にも同じものがたくさんありますから良いです!」には担当者も参ったような顔をしていたが、今にして思えば「同じこと」を確認しておくことも必要だったと反省している。

ごみ処理の工程について説明
ドイツごみ事情。
通訳をしていた通訳の相原さんと県の森さんからドイツごみ事情を伺う。
電気製品などは市に電話をすると引き取りに来てくれる。
市民にごみに関する義務はない。もし、容器包装リサイクル法に該当するグリュームプンクトのマークをつけた容器以外のものを、指定リサイクル回収箱に市民が捨てた場合でも、責任は企業に回る。消費者がやったことでも請求はメーカーに行く。
日本ではペットボトルが非常に増えているがドイツではどうかと聞くと
「ドイツでも便利だと思えば使うでしょうが、今のままで良いと考えている。よいものを長く使うことを誇りに思っている。学校の教科書も、次の子供たちに貸していくのがあたりまえ!」
「ペットボトルにしても、別に何度も使うことが汚いとか思わないんです。物が豊かでないドイツですから無駄はできません。それが基本です。そしてやはり環境に良いかどうかも大きな要素になってきました。」
「生ごみだってつきに2回ぐらいしか収集にきません。でも日本のように、湿気もないし、第一残飯が出ないように食事をしています。量も質も少なくて問題ありません。」
デポジットについて聞くと
「ほとんどデポジットです。もちろん買ったところに返しに行きますから、お金を返してもらうという感覚は少ないです。」
もちろん買うときはビールでも水でもジュースでもすべてビン。
「ビンの方が缶よりも良いです。缶は捨てますが、ビンはまた洗って使うから。ドイツ人は捨てることが嫌いです。たぶんペットボトルが便利ですよって言ってもあまり変わらないんじゃないですか。」
20年近くドイツで生活している相原さんはそう感想を言った。